バイオベンチャーのIPO その2

現在、東証マザーズは創薬系バイオベンチャーが上場をするにあたって満たすべき要件をガイドラインとして示しています(2010年2月時点)。その内容は次の通りです。


創薬系バイオベンチャーの上場ガイドライン

(以下、マザーズ上場審査に関するQ&Aより抜粋)

創薬系バイオベンチャー企業の場合、収益計上までの投資期間が相当長期にわたることに加え、上場時点では形としての製品が無く研究開発の途上であること、事業の専門性が高いこと、広範な行政当局による認可或いは知的財産権管理の複雑性など、他の業種に比べ事業の特異性が高いといえます。よって、事業のステージや状況によっては、一般投資家の投資対象物件として供するには相対的にリスクが高いと考えられます。そこで、上場に当たっては、以下に挙げるようなポイントを整備していただくことが望まれます。

これらのポイントは、創薬を成長の軸とされている場合は、原則として整備されていることが望まれます。しかし、バイオビジネスは事業形態のバリエーションが多岐にわたり、かつ、流動的であることから、幾つかのポイントが当てはまらないことも想定されます。その場合には、そのことが当該申請会社のリスクを相対的に高めていないことを合理的に説明していただく必要があると考えられます。


上場ガイドラインの妥当性

上記のガイドラインに含まれる7つのポイントは、原則として上場時に満たすことが求められています。このうち特に事業面で満たすべきポイントになるのは、臨床試験による薬理効果の確認、製薬会社とのアライアンスの2つです。

臨床試験による薬理効果の確認については、医薬品開発プロセスにおける臨床試験フェーズ2aで有効性を確認していることが必要と解釈されており、創薬ベンチャーは上場までにこのフェーズ2aまで開発を進めなければならないといえます。製薬会社とのアライアンスについては、医薬品業界の主役である製薬会社がそのバイオベンチャーが持っている開発品に魅力を感じ、ライセンス契約を結びたいと思うものであるかどうか、そこを問われるものです。上場までに製薬会社との交渉を行い、契約締結を実現する必要があります。

(関連知識 ⇒ 医薬品の開発プロセス

現在のマザーズのガイドラインは、技術の中身を詳細に評価はできなくても、この要件を満たしている創薬ベンチャーは一定の事業実現性があるといえるだろうとの考えに基づいていると思われます。しかし、本来はこのような要件は設けず個別の会社ごとに中身を評価するべきだというのが管理人の意見です。

例えば、開発ステージの面で要件を満たしていなかったとしても、上場による資金調達で事業を加速することで、日本を代表するバイオベンチャーになるような技術ポテンシャルを持つ会社もあるでしょう。バイオの世界はグローバルな競争環境にさらされており、開発や知的財産確保はスピード勝負になります。どんなに有望な技術であったとしても、資金調達の遅れがそのまま事業化の遅れにつながり、結果的に競争力を失うことは十分考えられます。せっかくの日本発の有望技術が資金調達の遅れによって日の目をみない結果にもなりかねません。

上場会社の質を保つという意味で、当面はこのような要件を設けることは仕方ないのかもしれません。今後、証券会社や証券取引所、市場の投資家のバイオベンチャー評価能力が向上し、このガイドラインの内容が変わっていくことを期待しています。


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